作家の中には、自ら好んで絵を描いたり、自著の装幀を依頼した画家にこまやかな指示をしたりするなど、美術に深くこころを寄せた人たちがいます。夏目漱石や芥川龍之介は、絵を描くことを楽しみ、著書の装幀にも自身の美意識を反映させました。また、俳誌「雲母」では多くの画家たちが表紙や誌面を彩ると共に、みずから句作に取り組む者もいて、美術と文学の交流の様子がみられます。
文学者の書画、装幀・挿絵の原画、作家と画家の交流を表す書簡などにより、文学と美術が織りなす豊かなコラボレーションの世界を紹介します。
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芥川龍之介(小説家・1892~1927)は、少年時代から絵画に関心を持ち、自身も回覧雑誌のカットを手がけたり、大人になってからもスケッチや河童のモチーフをはじめとする絵を何枚も描いたりしました。また、小穴隆一(おあなりゅういち・洋画家・1894~1966)ら画家達と親しく交流し、『夜来の花』以降の短編集の装幀はほぼ小穴が手がけました。本展では、芥川旧蔵のスケッチブックのほか、山梨県北杜市の清光寺滞在中に描いた「水虎晩帰之図(すいこばんきのず)」などを展示します。 |
【名称】特設展 作家の絵ごころ
【会場】山梨県立文学館 展示室C
【会期】2025年7月12日(土)~8月24日(日)
【休館日】7月14日(月)、22日(火)、28日(月)、8月4日(月)、18日(月)
【開館時間】展示室 9:00~17:00(入室は16:30まで)
閲覧室 9:00~19:00(土・日・祝日は18:00まで)
【観覧料】常設展観覧料でご覧いただけます
一般 330円(260円) 大学生 220円(170円)
※()内は20名以上の団体料金・県内宿泊者割引料金
※高校生以下の児童・生徒は無料
※大学生と高校生は学生証等持参
65歳以上の方は無料、年齢が分かるものをご提示ください
障害者手帳をご持参の方、およびその介護をされる方は無料
※下記リンクより、展覧会のチラシ(PDF)をダウンロードできます。
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飯田蛇笏・龍太が主宰し、通巻900号におよぶ長い歴史を持つ俳誌「雲母」には、表紙や裏表紙、本文中のカットを多彩な顔ぶれの画家たちが手がけました。初期には小川千甕(おがわせんよう・1882~1971)、小川芋銭(おがわうせん・1868~1938)、平福百穂(ひらふくひゃくすい1877~1933)ら「珊瑚会」の日本画家たちが表紙絵を描き、彼らは自らも俳句を作りました。また、洋画家の岸田劉生(1891~1929)、河野通勢(こうのみちせい・1895~1950)ら文芸誌「白樺」に関わりの深い洋画家たちも表紙画を寄せたことで知られています。 |
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『こころ』は、夏目漱石(小説家・1867~1916)自らが表紙、扉、題字等のデザインを考案し、原画を手がけました。漱石は美術に造詣が深く、自著の装幀にも深い関心を持っていました。橋口五葉(はしぐちごよう・1881~1921)装幀の『吾輩ハ猫デアル』『虞美人草』『草合』や、津田青楓(つだせいふう・1880~1978)装幀の『道草』『明暗』などは造本の傑作として知られています。視覚的に美しい漱石の初版本や、門下生として交流のあった津田青楓が漱石を描いた「漱石山房図」を紹介します。 |
・夏目漱石 津田青楓宛書簡 額装 1913(大正2)年6月18日
・芥川龍之介画 「紙窓風淅瀝」額装
・河野通勢画 「雲母」表紙原画 1939(昭和14)年第25巻第7号~12号に使用
・のむら清六 飯田龍太宛書簡
・三枝茂雄筆自画賛 「花を見て地獄の方へいく佛」軸装
・山田貞一画 太宰治『女生徒』表紙原画
・檀一雄ら「芙蓉帖」
・足立源一郎画 「八ヶ岳赤岳と阿弥陀岳 甲斐大泉にて」額装 油彩 1960年3月
本展で展示する夏目漱石画「鵞鳥を追う少女」模写、橋口五葉が装幀した漱石の単行本に合わせて県立美術館で次の作品を展示します。 6月10日(火)~8月31日(日)
●ミレー《鵞鳥を追う少女》…コレクション展A(ミレー館)にて展示
●橋口五葉《夏衣の女》…コレクション展B(テーマ展示室)にて展示
文学館常設展と美術館コレクション券がセットになったお得なチケットもございます。
関連イベント ※いずれも無料
●絵手紙ワークショップ
【日時】8月3日(日) 午前の部10:30~11:30・午後の部13:30~14:30
【会場】茶室(素心菴)
【講師】垣中絵美子(絵手紙講師)
【定員】午前・午後各10名(未就学児のお子様は保護者の付き添いが必要です)
※7月1日(火)よりお電話にてお申し込みください。(定員になり次第締め切り)
●年間文学講座3『特設展「作家の絵ごころ」展示資料の見どころ』※終了しました
【日時】7月27日(日) 14:00~15:10
【会場】研修室
【講師】伊藤夏穂(当館学芸員)
【定員】70名 ※お電話にてお申し込みください。(定員になり次第締め切り)
●閲覧室資料紹介『装幀を楽しむ』
【会期】7月11日(金)~8月24日(日)
【会場】1階 閲覧室
著者が装幀にこだわった図書や意匠を凝らした装幀の図書、魅力的な挿絵を掲載した雑誌 などを紹介します。資料は手に取ってご覧いただけます。
令和7年春は、生誕140年を迎える俳人の飯田蛇笏を取り上げます。
第4室「飯田蛇笏・飯田龍太記念室」の資料とあわせて、蛇笏の生涯を知り、その俳句の世界に親しんでいただけるよう、選りすぐりの資料を展示します。
俳人 1885~1962
山梨県東八代郡五成(ごせい)村(後の境川村、現在の笛吹市境川町)に、1885(明治18)年4月26日に生まれた。本名は、武治(たけはる)。別号の「山廬」(さんろ)は自宅を称した呼び名。 少年期より文学に親しみ早稲田大学に入学後、高浜虚子のもとで本格的に俳句を始める。1909(明治42)年、中退して帰郷。以後、生涯を郷里で過ごした。大正時代に入ると虚子が選をつとめる雑誌「ホトトギス」誌上で活躍。1915(大正4)年、愛知県で創刊された俳句雑誌「キラヽ」の選者に迎えられ、やがて主宰者となり誌名を「雲母」(うんも)と改め編集発行所を自宅に置き創作の拠点とした。 以降、昭和期を代表する俳人として活躍、多くの後進を育てた。また、若山牧水、芥川龍之介などと交友を結んだ。1962(昭和37)年10月3日、77歳で亡くなった後、四男の龍太が「雲母」主宰を継承、1992(平成4)年に900号で終刊した。
【名称】2025(令和7)年度 春の常設展 テーマ展示
「飯田蛇笏 生誕140年」
【会場】山梨県立文学館 2F 展示室A
【会期】2025年3月4日(火)~6月1日(日)
【休館日】月曜日(4月28日、5月5日は開館)、5月7日
【開館時間】9:00~17:00(入室は16:30まで)
【観覧料】一般 330円(260円) 大学生 220円(170円)
※()内は20名以上の団体料金・県内宿泊者割引料金
※高校生以下の児童・生徒は無料
※大学生と高校生は学生証等持参
※65歳以上の方は無料(健康保険証等持参)
※障害者手帳をご持参の方、およびその介護をされる方は無料
1 飯田蛇笏『山廬集』序文原稿
『山廬集』は蛇笏の第1句集。1932(昭和7)年12月、雲母社刊行。「なにが世の中で最も地味な為事かといつて、俳句作にたづさはるほどな地味なものは外にあるまいと思ふ」と始まり、芭蕉の生涯をふり返り、その心の内の豊かさに思いをはせる。
2 飯田蛇笏「くろがねの秋の風鈴鳴りにけり」短冊
代表作のひとつ。「雲母」1933年10月号発表時は、「鐵の秋ノ風鈴鳴りにけり」と表記したが、後、句集『霊芝』(れいし)収録の際に「くろがねの」と、ひらがな表記に改めた。
3 高浜虚子筆「山廬」扁額
「為蛇笏君 大正五年三月二十一日 虚子」とある。
山の住まいを意味する「山廬」(さんろ)を、蛇笏が自宅の呼び名として称したことから、虚子が贈った書。この額は、蛇笏が執筆や句会を行った蔵の二階に掲げられ、後、飯田家の母屋に懸けられた。
1、『山廬集』序文原稿、3虚子筆「山廬」扁額は、通常の常設展では複製を展示していますが、この期間は、原本を展示します。
樋口一葉の次兄虎之助の薩摩焼花瓶と一葉の小説「うもれ木」関連資料を展示中!
一葉の6歳年上の兄樋口虎之助(ひぐち とらのすけ1866~1925)は、15歳で陶工の成瀬誠志(なるせ せいし)に弟子入りし、修行の末、薩摩焼の絵付師として活動しました。
一葉が1892(明治25)年に発表した小説「うもれ木」は、虎之助に取材をして書き上げた小説で、薩摩焼の絵付師入江籟三 (いりえ らいぞう)と妹お蝶が登場します。
細密描写が際立つ虎之助の作品と一葉直筆の小説「うもれ木」関連資料をご覧ください。
【名称】樋口一葉の次兄虎之助の薩摩焼花瓶と一葉の小説「うもれ木」関連資料を展示中!
【会場】常設展第1室(展示室A) 樋口一葉コーナー
【会期】2024年11月15日(金)~2025年2月2日(日)
【休館日】月曜日、12月28日~1月1日、1月14日~21日
【開館時間】9:00~17:00(入室は16:30まで)
【観覧料】一般 330円(260円) 大学生 220円(170円)
※()内は20名以上の団体料金・県内宿泊者割引料金
※高校生以下の児童・生徒は無料
※65歳以上の方は無料(健康保険証等持参)
※障害者手帳をご持参の方、およびその介護をされる方は無料
※11月20日(水)県民の日はどなたでも無料
![]() 樋口虎之助作 薩摩焼金襴手花瓶 |
![]() 樋口一葉 「うもれ木」未定稿 1892(明治25)年 |
◇展示資料
・樋口虎之助 薩摩焼金襴手花瓶 一対
・樋口虎之助 薩摩焼絵皿「東海道五十三次 品川」
・樋口一葉「うもれ木」未定稿
・樋口一葉「三尺の細口臺付龍耳の花瓶」図
・「都の花」第95号 1892(明治25)年11月20日 金港堂
バーチャル展示室-文学の森をちょい散歩
山梨県立文学館では、山梨にゆかりのある樋口一葉、太宰治、芥川龍之介、飯田蛇笏の資料を「バーチャル展示室」でご紹介します。
指先マークの作品・資料をクリックすると拡大画像と解説が見られます。
ぜひおうちで作家についてごゆっくりお楽しみください。
おうちで文学クイズ
初級編~上級編までありますのでぜひお楽しみください。
※画像をクリックすると問題が出ます。
〈回答〉
「おうちミュージアム」に参加しました。
詳しくは以下の画像をクリックしてください。
山梨県立文学館は、この度北海道博物館が企画した「おうちミュージアム」の取り組みに参加することになりました。 この企画では、全国のミュージアム同士が手を組み、家で楽しみながら学べるコンテンツを発信しています。 全国のミュージアムがこの企画に参加していますので、訪問してみてください!