山本周五郎は、「夏草戦記」「樅ノ木は残った」「赤ひげ診療譚」「青かべ物語」「季節のない街」「虚空遍歴」「山彦乙女」ほか、数多くの作品により、今尚多くの読者から愛され、よみ継がれています。
周五郎の作品には、大衆的な魅力と文学性の高さとが両立しており、歿後三十余年を経た現在でもそれは鮮やかです。
尾崎士郎は、周五郎を、その個性あふれる言動から「曲軒」と命名しました。直木賞をはじめとする文学賞をすべて辞退したことも「曲軒」ぶりを示すエピソードの一つですが、それは、読者からの評価が至上のものであるという考えによるものでした。
本企画展では、周五郎の文学の本質を見つめながら、その人間像と、時代を超えて生き続ける数々の作品の魅力に光をあてていきます。