春の常設展では、武田信玄や武田家を描いた文学作品の中から、山本周五郎『山彦乙女(やまびこおとめ)』、深沢七郎『笛吹川(ふえふきがわ)』、相田隆太郎(そうだりゅうたろう)『武田信玄』、竹内勇太郎『謙信対信玄』を、直筆の作品原稿・草稿、図書、装幀原画などにより紹介します。
山本周五郎『山彦乙女』
1952(昭和27)年2月 朝日新聞社 装幀 芹沢銈介
谷内六郎画
深沢七郎『笛吹川』装幀(函)原画
©Michiko Taniuchi
◇ 山本周五郎「山彦乙女」 図書・文学碑写真パネル・新聞切り抜き
・「山彦乙女」
江戸の新御番・安倍半之助が、甲府勤番中に失踪した叔父の遺品をきっかけに、武田家の莫大な遺産をめぐるあやしい謎を解き明かすため、甲州へ出奔。権力に反発し人間らしく生きようとする半之助に、武田家再興を画策する一族の陰謀が次第に明らかになる。
・山本周五郎 1903~1967 大月市初狩町生まれ
本名清水三十六。小学校卒業後上京し20歳まで山本周五郎商店に丁稚奉公し、筆名はここに由来する。
1943年「日本婦道記」が第17回直木賞に選ばれたが、受賞を固辞、読者の評価に重きを置く姿勢を貫いた。「山彦乙女」「明和絵暦」など故郷山梨を舞台にした作品も多い。
◇深沢七郎「笛吹川」 原稿・装幀原画
・「笛吹川」
武田信玄が生まれる前から勝頼が亡くなるまでの60~70年の間、戦火の絶え間なかった笛吹川流域に生きる農民一族の6代にわたる物語。戦乱の渦中に生きる人々を達観し、残酷な生と死を鮮烈に描く。
・深沢七郎 1914~1987 笛吹市石和町生まれ
13歳の頃からギターを始め、1939年にリサイタルを開き、以後日劇ミュージックホールに出演するなどたびたびギタリストとして腕前を披露した。1956年「楢山節考」で作家としてデビューし、 中央公論新人賞を受賞。この他代表作に「笛吹川」「みちのくの人形たち」など。
◇相田隆太郎「武田信玄」 草稿
・「武田信玄」
川中島の戦いまでの信玄を描く。
・相田隆太郎 1899~1987 北杜市明野町生まれ
「文章世界」「文章倶楽部」などに主として時評を投稿。農民文芸会に初期より参加する。
農民文学、歴史小説、童話、経済評論など広く執筆活動を展開した。
◇竹内勇太郎「謙信対信玄」 草稿
・「謙信対信玄」
宿敵、上杉謙信と武田信玄の川中島の戦いを題材にした歴史小説。
・竹内勇太郎 1919~1993 甲州市塩山生まれ
テレビ放送開始とともに脚本家としてデビュー。テレビドラマの執筆や劇作を手がける一方、『甲府勤番帖』『山本勘助』など多くの歴史小説を執筆した。
*このほか、「飯田蛇笏・飯田龍太記念室」では、春の俳句の書画を中心に展示します。