春の常設展では、深沢七郎(1914~1987 小説家 山梨県笛吹市生まれ)の生誕110年を記念した展示を行います。
【名称】2024(令和6)年度 春の常設展 期間限定公開コーナー
「深沢七郎 生誕110年」
【会場】山梨県立文学館 2F 展示室A
【会期】2024年3月5日(火)~6月2日(日)
【休館日】月曜日(4月29日、5月6日は開館)、5月7日(火)
【開館時間】9:00~17:00(入室は16:30まで)
深沢七郎愛用のギター (寄託資料)
手前から瑞雲(ずいうん)と古稀(こき)。
深沢七郎は、戦後、ギタリストとして活躍する一方、1956(昭和31)年、小説「楢山節考(ならやまぶしこう)」で作家としてデビューします。郷土で培われた土俗的な思考や庶民の視点から、人間の生死を見つめ直す作品を試み、近代文学の中で独自の存在感を示しました。
「楢山節考」原稿と下書き段階の草稿、高橋忠弥による『楢山節考』装幀原画、「笛吹川」草稿、愛用のギターなどを展示します。
小説家 1914~1987 山梨県東八代郡石和町(現・笛吹市石和町)生まれ
県立日川中学校(現・県立日川高校)卒業後、東京で働きながらギターに打ち込んだ。戦後は、東京の日劇ミュージックホールでギタリストとして活躍する一方、小説執筆に本格的に取り組み、1956(昭和31)年42歳の時、小説「楢山節考」でデビュー。その後、戦国時代の甲州を舞台に、農民一族の生死を描いた「笛吹川」や、都会で生きる若者の生態を捉えた「東京のプリンスたち」など、話題作を次々に発表。一方、私生活では、埼玉県にラブミー農場を開いて農業に従事したり、今川焼屋「夢屋」を経営するなど話題を呼んだ。
■展示資料より
・深沢七郎「楢山節考」原稿・「楢山節考」草稿(寄託資料)
第1回中央公論新人賞を受賞したデビュー作。信州の姥捨伝説を題材に、山梨県笛吹市境川町大黒坂の「人情や地形」をイメージして執筆したという。自身が作詞作曲した「楢山節」の譜面が、作品の合い間に挿入されている。また草稿には、完成稿と大きく異なる展開が書かれている。
・高橋忠弥 画 『楢山節考』装幀原画
単行本『楢山節考』(1957年2月 中央公論社)の表紙、カバー、扉絵などに用いられた、高橋忠弥による原画。
・深沢七郎「笛吹川」草稿
戦国時代の甲州武田家の盛衰を背景に、笛吹川沿いに暮らす農民一家の六代にわたる物語。繰り返される生と死が淡々と描かれる。「楢山節考」の執筆以前より、史料収集につとめ構想を練り、書き下ろし作品として刊行された。
・深沢七郎 井伏鱒二宛書簡 1968(昭和43)年3月10日
敬愛する作家・井伏鱒二が、結城紬の着物で深沢のギターリサイタルに来たことを、自分の演奏する曲「紡ぎ唄」に合わせてくれたと解し、「なんとシャレた人だろう」と思ったことを伝える。この内容はエッセイ「井伏先生と共に」に描かれる。
・深沢七郎愛用のギター(寄託資料)
東洋のストラディバリウスと呼ばれた、バイオリン製作で名高い宮本金八により作られたもの。