常設展では、季節ごとの展示替えの際、特設のテーマ展示のコーナーを設けています。 令和7年度夏のテーマ展示では、甲府に疎開した井伏鱒二と太宰治を紹介します。
井伏鱒二は、1944(昭和19)年に甲運村(現・甲府市和戸町)の岩月家に、家族とともに疎開しました。翌年4月、太宰治は甲府の妻の実家に家族で疎開し、たびたび井伏の滞在する岩月家を訪れ、山梨の文学者と交流を持ちました。7月6日の甲府空襲の後、井伏は広島、太宰は青森の、それぞれの故郷へと再疎開し、終戦を迎えました。再疎開先から出された手紙や、岩月家旧蔵の井伏鱒二の書、太宰治の原稿などを展示します。
小説家 1898~1993 広島県生まれ
本名満寿二。東京府井荻村(現・杉並区清水)に居を構えた1927(昭和2)年以後、小説の取材や趣味の川釣りのためしばしば山梨を訪れ、俳人の飯田蛇笏・龍太親子とも長く親交を持った。1938年、太宰治を御坂峠の天下茶屋に誘い、結婚に至るまでの世話をしていた。「山椒魚」「黒い雨」などの代表作のほか、「七つの街道」「岳麓点描」など、山梨を舞台にした作品も多い。
小説家 1909~1948 青森県生まれ
本名 津島修治。1936年、第1創作集『晩年』を刊行。1938年、御坂峠の天下茶屋に井伏鱒二を訪ねる。翌1月、甲府の石原美知子と結婚、「富嶽百景」「新樹の言葉」等の秀作を執筆。1945年4月に石原家に疎開するが空襲に遭い、青森で終戦を迎える。戦後、体調を崩しながらも「斜陽」「人間失格」などを発表した。
【名称】2025(令和7)年度 夏の常設展 テーマ展示
「戦後80年 文学者と疎開 井伏鱒二・太宰治」
【会場】山梨県立文学館 2F 展示室A
【会期】2025年6月3日(火)~8月24日(日)
【休館日】月曜日(7月21日、8月11日は開館)、7月22日
【開館時間】9:00~17:00(入室は16:30まで)
【観覧料】一般 330円(260円) 大学生 220円(170円)
※()内は20名以上の団体料金・県内宿泊者割引料金
※高校生以下の児童・生徒は無料
※大学生と高校生は学生証等持参
※65歳以上の方は無料(健康保険証等持参)
※障害者手帳をご持参の方、およびその介護をされる方は無料
![]() 井伏鱒二 岩月くま宛書簡 1945(昭和20)年7月12日 便箋1枚目と封筒裏 |
![]() 太宰治 『パンドラの匣』 双英書房版 あとがき原稿 |
この他の展示資料より
・井伏鱒二「二つの話」原稿
・井伏鱒二「げにわがために吾がためにわれは貧しくひとり咲く」軸装
・太宰治 井伏鱒二宛書簡 1945(昭和20)年8月末頃か
・太宰治 熊王徳平宛はがき 1946(昭和21)年5月13日付
・太宰 治『パンドラの匣』書き込み本 1946(昭和21)年6月 河北新報社
・太宰治『薄明』1946(昭和21)年11月 新紀元社 など約15点を展示。