展覧会


展覧会情報

特設展
作家の絵ごころ
視覚で楽しむ文学展
2025年7月12日(土)~8月24日(日)

開催概要

 作家の中には、自ら好んで絵を描いたり、自著の装幀を依頼した画家にこまやかな指示をしたりするなど、美術に深くこころを寄せた人たちがいます。夏目漱石や芥川龍之介は、絵を描くことを楽しみ、著書の装幀にも自身の美意識を反映させました。また、俳誌「雲母」では多くの画家たちが表紙や誌面を彩ると共に、みずから句作に取り組む者もいて、美術と文学の交流の様子がみられます。
 文学者の書画、装幀・挿絵の原画、作家と画家の交流を表す書簡などにより、文学と美術が織りなす豊かなコラボレーションの世界を紹介します。

 

 

 

 

 

 


芥川龍之介画「水虎晩帰之図」
1923(大正12)年8月

 

 芥川龍之介(小説家・1892~1927)は、少年時代から絵画に関心を持ち、自身も回覧雑誌のカットを手がけたり、大人になってからもスケッチや河童のモチーフをはじめとする絵を何枚も描いたりしました。また、小穴隆一(おあなりゅういち・洋画家・1894~1966)ら画家達と親しく交流し、『夜来の花』以降の短編集の装幀はほぼ小穴が手がけました。本展では、芥川旧蔵のスケッチブックのほか、山梨県北杜市の清光寺滞在中に描いた「水虎晩帰之図(すいこばんきのず)」などを展示します。

 

 

【名称】特設展 作家の絵ごころ

【会場】山梨県立文学館 展示室C

【会期】2025年7月12日(土)~8月24日(日)

【休館日】7月14日(月)、22日(火)、28日(月)、8月4日(月)、18日(月)

【開館時間】展示室 9:00~17:00(入室は16:30まで)

      閲覧室 9:00~19:00(土・日・祝日は18:00まで)

【観覧料】常設展観覧料でご覧いただけます

 一般 330円(260円) 大学生 220円(170円)

 ※()内は20名以上の団体料金・県内宿泊者割引料金

 ※高校生以下の児童・生徒は無料

※大学生と高校生は学生証等持参

65歳以上の方は無料、年齢が分かるものをご提示ください

  障害者手帳をご持参の方、およびその介護をされる方は無料

 

 ※下記リンクより、展覧会のチラシ(PDF)をダウンロードできます。

おもな展示資料

 

 




 檀一雄(1912~1976)は山梨県都留市生まれの小説家。図画の教員だった父を持ち、自身も様々なモチーフを題材に絵を描きました。学生時代の自画像や父母をモデルにした人物画、果物など身近な題材をテーマにした静物画、独自の色彩センスが感じられる書画、中国での従軍中に描いたスケッチ帳などを紹介します。

 


檀一雄 自画像 年代不明 当館寄託

 

 


小川芋銭「雲母」表紙原画
1929(昭和4)年第15巻第1号~第12号に使用

 

 飯田蛇笏・龍太が主宰し、通巻900号におよぶ長い歴史を持つ俳誌「雲母」には、表紙や裏表紙、本文中のカットを多彩な顔ぶれの画家たちが手がけました。初期には小川千甕(おがわせんよう・1882~1971)、小川芋銭(おがわうせん・1868~1938)、平福百穂(ひらふくひゃくすい1877~1933)ら「珊瑚会」の日本画家たちが表紙絵を描き、彼らは自らも俳句を作りました。また、洋画家の岸田劉生(1891~1929)、河野通勢(こうのみちせい・1895~1950)ら文芸誌「白樺」に関わりの深い洋画家たちも表紙画を寄せたことで知られています。

 

 





 「雲母」1955年第41巻5月号~8月号表紙原画。甲府市生まれの画家・辻葦夫(つじあしお・1902~1980)は、飯田蛇笏、龍太父子に師事して俳句を詠みました。俳号は蕗村(ろそん)。

 


辻葦夫画 「山河」 1955(昭和30)年頃

 

 


夏目漱石『こころ』
(大正3)年9月 岩波書店 左は外箱

 

 『こころ』は、夏目漱石(小説家・1867~1916)自らが表紙、扉、題字等のデザインを考案し、原画を手がけました。漱石は美術に造詣が深く、自著の装幀にも深い関心を持っていました。橋口五葉(はしぐちごよう・1881~1921)装幀の『吾輩ハ猫デアル』『虞美人草』『草合』や、津田青楓(つだせいふう・1880~1978)装幀の『道草』『明暗』などは造本の傑作として知られています。視覚的に美しい漱石の初版本や、門下生として交流のあった津田青楓が漱石を描いた「漱石山房図」を紹介します。

 

 


 

この他、主な展示資料

・夏目漱石 津田青楓宛書簡 額装 1913(大正2)年6月18日
・芥川龍之介画 「紙窓風淅瀝」額装
・河野通勢画 「雲母」表紙原画 1939(昭和14)年第25巻第7号~12号に使用
・のむら清六 飯田龍太宛書簡
・三枝茂雄筆自画賛 「花を見て地獄の方へいく佛」軸装
・山田貞一画 太宰治『女生徒』表紙原画
・檀一雄ら「芙蓉帖」
・足立源一郎画 「八ヶ岳赤岳と阿弥陀岳 甲斐大泉にて」額装 油彩 1960年3月

 

 


 

山梨県立美術館で連携展示を実施

本展で展示する夏目漱石画「鵞鳥を追う少女」模写、橋口五葉が装幀した漱石の単行本に合わせて県立美術館で次の作品を展示します。 6月10日(火)~8月31日(日)
●ミレー《鵞鳥を追う少女》…コレクション展A(ミレー館)にて展示
●橋口五葉《夏衣の女》…コレクション展B(テーマ展示室)にて展示
文学館常設展と美術館コレクション券がセットになったお得なチケットもございます。

 


 

関連イベント ※いずれも無料

 

●絵手紙ワークショップ

【日時】8月3日(日) 午前の部10:30~11:30・午後の部13:30~14:30
【会場】茶室(素心菴)
【講師】垣中絵美子(絵手紙講師)
【定員】午前・午後各10名(未就学児のお子様は保護者の付き添いが必要です)
※7月1日(火)よりお電話にてお申し込みください。(定員になり次第締め切り)

 

●年間文学講座3『特設展「作家の絵ごころ」展示資料の見どころ』

【日時】7月27日(日) 14:00~15:10
【会場】研修室
【講師】伊藤夏穂(当館学芸員)
【定員】70名 ※お電話にてお申し込みください。(定員になり次第締め切り)

 

●閲覧室資料紹介『装幀を楽しむ』

【会期】7月11日(金)~8月24日(日)
【会場】1階 閲覧室
著者が装幀にこだわった図書や意匠を凝らした装幀の図書、魅力的な挿絵を掲載した雑誌 などを紹介します。資料は手に取ってご覧いただけます。