『南総里見八犬伝』は江戸時代の後期、19世紀の前半に、江戸の戯作者曲亭馬琴が、足かけ29年の歳月をかけて完成させた全98巻106冊に及ぶ長大な作品です。室町時代の安房地方に実在した里見氏の歴史を背景に、「八犬士」をはじめとする善悪様々な人物が次々に登場し、関東一円から越後、甲斐、京にまで舞台を拡げて活躍します。刊行中から評判を呼び、錦絵や歌舞伎に取り入れられ、ダイジェスト版やパロディ本もあらわれました。明治以降、現代に至る今日までも小説や映画、コミック、ゲームなど幅広いジャンルを刺激して新たな作品を生み出しています。
本展では、 『南総里見八犬伝』の原本展示のほか、当時ブームとなったことがわかる多種多様な関連資料約150点を一堂に展示します。「八犬伝」ファンの方はもちろんのこと、初心者の方にも分かりやすいよう、あらすじや関係地図、人物相関図をパネルで紹介するほか、未読の方でも視覚的に楽しめる資料も用意しています。時代とジャンルを超えて愛されるベストセラー「八犬伝」の魅力をご堪能ください。
【名称】企画展 ベストセラー誕生!「南総里見八犬伝」の世界
【会場】山梨県立文学館 展示室C
【会期】2025年9月13日(土)~11月24日(月・振休)
【休館日】月曜日(9月15日、9月22日、10月13日、11月3日は開館)
9月24日(水)、10月14日(火)、11月4日(火)
【開館時間】展示室 9:00~17:00(入室は16:30まで)
閲覧室 9:00~19:00(土・日・祝日は18:00まで)
【観覧料】一般 600円(480円) 大学生 400円(320円)
※大学生は学生証を提示
※( )内は20名以上の団体料金、県内宿泊者割引料金
次の方は無料
・高校生以下の児童・生徒(高校生は学生証を提示)
・県内在住65歳以上(年齢が分かるものを提示)
・障害者手帳持参者とその介護者
・11月20日(木)の県民の日はどなたでも無料
※下記リンクより、展覧会のチラシ(PDF)をダウンロードできます。
八つのみどころ!
一.『南総里見八犬伝』全106冊を一挙展示
八犬伝は、文章が主体の「読本」というジャンルの作品ですが、犬をモチーフにした表紙や物語の山場を描いた挿絵など、視覚的にも楽しむところは色々あります。
(画像1:『南総里見八犬伝』全98巻106冊 文化11年(1814)~天保13年(1842) 館山市立博物館蔵)
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二.馬琴自筆の掛け軸や短冊、馬琴と並んで人気を博した山東京伝の資料も展示
当時流行していた狂歌を詠んだ馬琴の短冊掛け軸、馬琴の先輩で、黄表紙作家、絵師としても人気を誇った山東京伝の直筆資料も展示します。
(画像2:馬琴狂歌短冊 「三夕之一 こゝろなき身にも涙はこぼれけりあくびのあとの秋の夕ぐれ著作堂」 個人蔵)
三.馬琴は大変な多作の書き手。「八犬伝」だけじゃない作品の数々
デビューした初期の作品や、葛飾北斎が挿絵を担当した『椿説弓張月』、「八犬伝」と同時進行で執筆した『新編金瓶梅』など、旺盛な創作力をご覧ください。
四.絵本やパロディ本、長唄本などへ波及した「八犬伝」の広がり
漢字や難しい言葉遣いが多い原作を、ひらがな中心に書き改めた『雪梅芳譚 犬の草紙』『仮名読八犬伝』で八犬伝の読者層はさらに広がります。八犬伝の後日譚、女性版八犬伝の本も刊行され、馬琴の手を離れたところで「八犬伝」が広がっていった様子を紹介します。
(画像3:笠亭仙果(二世柳亭種彦)作 三代歌川豊国等画『雪梅芳譚 犬の草紙』全56冊 弘化5年(1848)~明治14年(1881) 個人蔵)
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五.「八犬伝」の人物、名場面を描いた錦絵、歌舞伎の役者絵の数々
善悪様々な登場人物、「芳流閣」など名場面を描いた錦絵を一堂に集めました。
(画像4:月岡芳年「芳流閣両雄動」大判錦絵竪2枚続 明治20年(1887) 個人蔵)
六.芥川龍之介「戯作三昧」直筆原稿を展示
芥川龍之介の小説「戯作三昧」は、「八犬伝」の執筆に悩む馬琴の心中を描いています。
(画像5:芥川龍之介「戯作三昧」原稿 「大阪毎日新聞夕刊」大正6年(1917)10月20日~11月4日連載 当館蔵)
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七.「新八犬伝」(NHK人形劇)の辻本ジュサブロー作の人形・伏姫
昭和48年から2年間放送されたこの人形劇に夢中になった方は多いはず。辻村ジュサブローの人形、「伏姫」を間近でご覧いただけます。
(画像6:辻村ジュサブロー NHK「新八犬伝」人形 伏姫 館山市立博物館蔵)
八.映画や舞台などの幅広い展開を紹介、昨年映画化もされた山田風太郎の『八犬伝』原稿
山田風太郎の小説『八犬伝』は、馬琴の実生活を描く「実の世界」と『八犬伝』の物語世界を描く「虚の世界」が交互にあらわれて進行します。昨年、映画が公開されたばかりの原作の原稿です。
(画像7:山田風太郎『八犬伝』原稿 館山市立博物館蔵 「朝日新聞」昭和57年(1982)夕刊に連載)
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関連イベント
◇講演会
「長編小説家曲亭馬琴」
【講師】高橋 源一郎(小説家・文芸評論家)
【日時】10月5日(日) 13:30~15:00
【会場】講堂(定員500名)
「『南総里見八犬伝』の構成と趣向」
【講師】服部 仁(同朋大学名誉教授・企画展編集委員)
【日時】10月13日(月・祝) 13:30~15:00
【会場】講堂(定員200名)
「江戸時代 甲州の本屋と書籍文化」
【講師】鈴木 俊幸(中央大学教授・企画展編集委員・NHK大河ドラマ「べらぼう」版元考証)
【日時】10月25日(土) 13:30~15:00
【会場】講堂(定員200名)
年間文学講座3「展示の見どころ」
【講師】高室 有子(担当学芸員)
【日時】9月14日(日) 14:00~15:10
【会場】研修室(定員100名)
◇ワークショップ
「消しゴムはんこワークショップ」
【講師】アオヤギルミ(消しゴムはんこ作家)
【日時】9月21日(日) (午前・午後2回)10:00~11:30、14:00~15:30
【会場】研修室(定員 午前・午後各回それぞれ15名(小学4年生以上))
【材料費】1人500円
◇ワークショップ
講談教室「八犬伝」の講談を鑑賞後、実演教室
【講師】三龍亭千公・三龍亭夢学(伝統話芸集団「南房総三龍亭」)
【日時】11月1日(土) 10:15~12:15
【会場】研修室(定員 20名(小学3年生以上))
【テキスト代】1人600円
◇閲覧室資料紹介
「どうぶつとぶんがく」(入場無料)
【会期】9月12日(金)~11月24日(月・振休)
【時間】9:00~19:00(土・日・祝日は18:00まで)