「南総里見八犬伝」は、江戸時代後期、曲亭馬琴が足かけ29年の歳月をかけて完成させた全98巻106冊に及ぶ一大長編小説です。8人の「八犬士」が活躍する物語は、刊行当時から人気を集め、歌舞伎や錦絵の題材になり、近現代には小説や映画、コミック、ゲームに取り上げられました。時代とジャンルを超えて愛されるベストセラー「八犬伝」の魅力をお楽しみいただきます。
作家の中には、自ら好んで絵を描いたり、画家に装画を依頼したりするほど著書の装幀にこだわった人たちがいます。芥川龍之介は少年時代から回覧雑誌のカットなどを手がけ、小説家となってからも小穴(おあな)隆一(りゅういち)ら画家たちと親しく交流しました。また、図画の教員だった父をもつ檀一雄は、自身も様々なモチーフを題材に絵を描きました。文学と美術が織りなす豊かなコラボレーションの世界を紹介します。
作家・辻邦生(1925~1999)は、小説の舞台となる場所を自らの足で訪れ、その時代の膨大な歴史資料を読み込み、小説の執筆にあたりました。作者自身も時空を超えて旅をしながら、小説に古今東西の世界を再現しました。古代ローマを舞台にした「背教者ユリアヌス」、ルネサンス期フィレンツェのボッティチェルリを描いた「春の戴冠 」、山梨県笛吹市春日居町国府の父祖の地を探求した「銀杏散りやまず」、平安末期の歌人・西行をゆかりの人の多彩な声で語る「西行花伝」などの代表作とともに、その生涯をたどります。