卓抜な着想とトリックで傑作を書き、日本の探偵小説を牽引した江戸川乱歩(えどがわ らんぽ 1894~1965)。金田一耕助(きんだいち こうすけ)シリーズで本格的な長編推理小説の興盛へと導く横溝正史(よこみぞ せいし 1902~1981)。「人生の阿呆」で直木賞を受賞し、「探偵小説」を深化させた「推理小説」という名称を提唱した甲府市出身の木々高太郎(きぎ たかたろう 1897~1969)。日本のミステリー(推理小説)の草創期から現代までをたどり、その魅力と人気の秘密を探ります。
俳人の飯田龍太(いいだ りゅうた 1920.7.10~2007.2.25)は、山梨県笛吹市境川町(ふえふきしさかいがわちょう)に生まれ、86年の生涯のほとんどをこの地で過ごしました。生誕100年を記念して、自筆資料を中心に、龍太の俳句や随筆の魅力を見つめ直していきます。
また、境川の自宅・山廬(さんろ)での生活の様子や、幅広い交友など龍太の素顔を紹介します。
飯田龍太(いいだ りゅうた)
1920(大正9)年7月10日、山梨県笛吹市境川町に俳人・飯田蛇笏の四男として生まれた。三人の兄を戦争と病で失うと、定住の意志を固め、蛇笏が主宰する俳誌「雲母(うんも)」の編集に従事した。1954(昭和29)年8月、第一句集『百戸の谿(ひゃっこのたに)』を刊行、「第二芸術論」「社会性俳句」の議論に湧く戦後俳壇に伝統派の旗手として登場した。1962年10月に蛇笏が亡くなると「雲母」の主宰となり、全国各地の句会に出席、指導する一方、鑑賞・評論・随筆へと活動を広げていった。通信俳句講座の監修や新聞の投稿欄の選なども担当し、俳句を詠みかつ味わう楽しさ、俳句を通して日常生活を豊かにしていくよろこびを、平明な言葉で幅広い世代に語りかけた。俳句人口がかつてないほど増大し、俳壇の第一線に立った龍太は、最後の句集となった『遲速(ちそく)』を刊行した翌年の1992(平成4)年に、「雲母」を8月発行の900号で終刊とする決意を述べ、社会的に大きな話題となった。以後、15年間、俳句を発表することなく2007年2月、86歳の生涯を終えた。
作品の執筆や、日常生活、趣味など、作家が様々な場面で愛用した品から、作家の暮らしや作品に思いを馳せ、作家を身近に感じてもらう展覧会です。 樋口一葉の髪飾り、飯田蛇笏の硯、芥川龍之介の財布、太宰治のノート、深沢七郎のギターなど、作家が愛用した品々を、エピソードや作品とともに紹介します。
◆ みどころ
・樋口一葉の日本髪を飾った髪飾り
・重ねて持ち運びができる飯田蛇笏の句会用の硯
・芥川龍之介の革製財布
・太宰治が甲府空襲で避難するときに持っていたノート
・小説家でありギタリストでもあった深沢七郎が愛用したギター
富士山は、古来より詩歌や散文などの文学作品に数多く描かれてきました。
本展では、芥川龍之介が旧制第一高等学校時代に書いた作文、太宰治の手紙、草野心平の絵画など富士山に関連した直筆資料を中心に展示。作家が表現した様々な富士山の姿を、「暮らし」「ビュースポット」「アウトドア」など身近なテーマを通して楽しめます。
冬の常設展では、現代の文学界の第一線で活躍する南巨摩郡富士川町出身の小説家・神永学を紹介します。2004(平成16)年のデビュー作『心霊探偵八雲 赤い瞳は知っている』浄書原稿ほか、 『怪盗探偵山猫』署名本など約30点を展示します。
秋の常設展では、現代の文学界の第一線で活躍する笛吹市出身の小説家・辻村深月を紹介します。2004(平成16)年に第31回メフィスト賞を受賞したデビュー作「冷たい校舎の時は止まる」浄書原稿ほか、第32回吉川英治文学新人賞受賞の『ツナグ』署名本、第147回直木賞受賞の『鍵のない夢を見る』単行本、第15回本屋大賞受賞の『かがみの孤城』署名本などを展示します。
夏の常設展では、1982(昭和57)年のデビュー作『ルンルンを買っておうちに帰ろう』から第一線で活躍し続ける山梨市出身の作家・林真理子を紹介します。
山梨を舞台にした小説『葡萄が目にしみる』やNHK大河ドラマの原作となった『西郷どん!』などの直筆原稿を展示します。
春の常設展では、武田信玄や武田家を描いた文学作品の中から、山本周五郎『山彦乙女(やまびこおとめ)』、深沢七郎『笛吹川(ふえふきがわ)』、相田隆太郎(そうだりゅうたろう)『武田信玄』、竹内勇太郎『謙信対信玄』を、直筆の作品原稿・草稿、図書、装幀原画などにより紹介します。
山本周五郎『山彦乙女』
1952(昭和27)年2月 朝日新聞社 装幀 芹沢銈介
谷内六郎画
深沢七郎『笛吹川』装幀(函)原画
©Michiko Taniuchi